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人生朝露

人生朝露

荘子のいるらしき場所 その2。

荘子です。
荘子です。

オウム真理教のシンボル。
オウム真理教について少し。
オウム(AUM)というのは、漢字で書けば「阿吽(あうん)」のことで、梵字を使っているのでも分かるように、日本の仏教思想の中で最も近いのは真言宗もしくは新宗教のうちの阿含宗でして、いわゆる密教の要素が非常に強い団体でした。

ダライ・ラマ14世とだれかさん。
ありとあらゆる宗教的な要素が入っていまして、仏教のみならず、道教の要素も見て取れますが、教義に関して最も重心があるのは、チベット仏教です。阿含宗もチベット仏教の影響が濃厚ですし、高橋克也容疑者が逮捕前まで所持していた書籍にも中沢新一の『三万年の死の教え―チベット「死者の書」の世界』 や、カルロス・カスタネダの本など精神世界の本があったようです。もともと、中沢さんの『虹の階梯』のようなチベット仏教の紹介本からオウムのブームが起きているので、高橋容疑者は、逃亡中でもそこに救いを求めようとしたんでしょうね。

C.G.ユング
当ブログでも何度もユングと東洋思想との関連を書いていますが、ユングの思想の中にチベット仏教の影響があることは間違いないです。ユングの思想を見るときに、日本で仏教を学んだ人では理解しがたい側面も、チベット仏教を通すと分かるという点もあります。たとえば、上祐史浩氏が代表をつとめている「ひかりの輪」の説明を読むと分かると思うんですが、非常に真面目に仏教を理解しています。人間の根元的な問いを、当時の人々が無視し続けた結果、その受け皿としてオウム真理教が爆発的に広まった側面は否定できないでしょう。

参照:ユング心理学と仏教(1) - 上祐史浩オフィシャルサイト
http://www.joyus.jp/hikarinowa/doctrine/religious-science/03/0007.html

量子力学によるパラダイムシフト(1)
http://www.joyus.jp/hikarinowa/doctrine/religious-science/02/0002.html

縁起の法を現代科学で見る
http://www.youtube.com/watch?v=zXtjEVS-8FE&feature=relmfu

この辺とかは、当ブログとやっている視点とあまり変わりません。オウム真理教は、ニューエイジとか、ニューサイエンスといった東洋思想や東洋哲学の影響を受けた欧米の思想潮流にも敏感で、それらを積極的に取り入れていたので、彼らの得意分野ではあるでしょう。ただし、最後までユングが注視し続けたのは、ユング自身が言うように老子です。

参照:量子力学と荘子。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5057

ユングと鈴木大拙。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5095

チベット仏教というのは、日本では一部しか伝わらなかった後期仏教の流れも汲んでいまして、日本人が一般的に接する仏教とは異なる形式を持っています。仏教伝来以前のチベットの土着の信仰とも密接に繋がっていますので、浅い理解で、いきなり日本人がタントラ使ったら、そりゃ、腹を壊しますよ。オウムがイニシエーションと称してやっていたことの一部は、日本仏教が歴史的に弾圧を加えた内容も含んでいます。それだけに既存の仏教になく、革命的で鮮烈な印象を与えたんだと思いますが、無邪気にやっていい類のものではないですね。

廃仏毀釈によって日本仏教が大打撃を受けた後、仏教の復興を志して、二回もヒマラヤを超えた河口慧海さんが、チベット仏教を広めようとしなかった意味はその辺じゃないかと思いますよ。すくなくとも、日本はチベットよりも仏教国である歴史は長いんだし、自分たちの視点からチベット仏教を見ることも大切だと思いますよ。

河口慧海(1866~1945)。
≪その巨細(こまか)な事については風俗を害する恐れもあり、また余り猥褻(わいせつ)にして大方の人に知らすことの出来ぬ事も沢山あります。とにかく仏法の好名題をいちいち煩悩(ぼんのう)の求むるところのものに配合して、種々附会(ふかい)の説明を施して居る。日本でも昔時(むかし)真言宗において立川流というものが起って、陰陽道と秘密の法とを合してこれに似たような説を唱えて、大いに社会を蠧毒(とどく)したことがあったです。それは日本でもある部分には大分盛んに行われたようで、ただしその経文および論部のいかんは今残って居る者が少ないからよくは分りませんけれども、なかなかチベットに在るような大きなものじゃあるまいと思われる。
 チベットのはインドから伝わって非常に広く行われ今もなおその経典が沢山存在して居る。既にインドで拵えられたサンスクリット語(梵語(ぼんご))の経典および翻訳書籍も大分チベットに存在して居る。それからそれらの教えについてその後ラマ達が自分の思い思いに造り出した説、かえって仏教を蠧毒(とどく)するところの教えを、仏教の名でもって沢山に世にあらわして居る。それは現今チベット仏教の半分はその経文で満たされて居るというても、決して過言ではないと思われる程である。
 既に私が持って帰った経典の中にもこの宗派において最も確かとせられ、最も信用されて居るところの秘密部の書物が沢山あります。これはただ私が秘密に調べるだけの事で、社会に公にするのもほとんど困難な位猥褻(わいせつ)のものである。そういう主義の教えがチベットの古代に行われて今より五百年以前まではなかなか盛んでありました。ところでその教えが実に腐敗を極めて、いかに倫理の紊(みだ)れて居る事を習慣として居るチベット国でも、実にしてみようのない程困難の地位に陥ったです。(青空文庫 河口慧海『チベット旅行記』より)≫

参照:青空文庫 チベット旅行記
http://www.aozora.gr.jp/cards/001404/files/49966_44769.html

Wikipedia 立川流 (密教)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%8B%E5%B7%9D%E6%B5%81_(%E5%AF%86%E6%95%99)

河口慧海は、ドルジェ・シュクデンの様子も見ています。チベット仏教にお手軽に触れるみなさんが「中国共産党の工作員」と呼び続けている(泣)、チベットの伝統的な宗派です。

参照:Wikipedia シュクデン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%AF%E3%83%87%E3%83%B3

・・・日本の神話の天の岩戸のくだりでアメノウズメの裸踊りのシーンがあることでも分かるように、原初の社会において、性というのはおおらかで赤裸々なものです。インドの『カーマ・スートラ』とか、道教の房中術のように、東洋思想においては、ヨーガの一種として性的な要素は必然性を持って存在しています。チベット仏教の中に原始仏教の本質的な要素が残っているのは間違いないんですが、河口慧海がチベットに渡ったときは、僧侶の堕落の口実として、公然といかがわしい呪術が横行していた時期で、彼の筆致の辛辣さは、堕落した上に貴族化した僧侶の醜さに失望したあらわれだと思います。もちろん、これはどの宗教にも起こりうるものですし、チベット仏教に罪をかぶせるつもりはないですが、オウムの教祖のただれた性生活に、かつてのチベット僧の堕落を見ます。

マハリシとビートルズ。
ちなみに、ビートルズがインドのマハリシ・マヘシ・ヨギの下でTMという瞑想方法を学びながらも、マハリシと訣別した理由もセックスでした。

参照:The Beatles Sexy Sadie WITH LYRICS -COMPLETE ENDING
http://www.youtube.com/watch?v=RJ3Px5FCJls

参照:Wikipedia セクシー・セディー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC

ビートルズは、彼らの時代の聖人を求めたものの、瞑想の師であるマハリシがミア・ファローを煩悩の対象にしようとしたという理由で、インドを去ります。その後もポールはTMをやっていったんですが、ジョンはインドよりさらに東を目指すようになります。オノ・ヨーコとの出会いによってそれに拍車がかかります。

参照:荘子とビートルズ。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5034

荘子とビートルズ その2。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5120

Zhuangzi
『語大功、立大名、禮君臣、正上下、為治而已矣、此朝廷之士、尊主強國之人、致功并兼者之所好也。就藪澤、處閑曠、釣魚閑處、無為而已矣、此江海之士、避世之人、間暇者之所好也。吹呴呼吸、吐故納新、熊經鳥申、為壽而已矣、此道引之士、養形之人、彭祖壽考者之所好也。』(『荘子』刻意 第十五)
→功を語り、名を立て、君臣の礼を説いて天下を治めることに専心する。これは、朝廷に仕え、主君を尊び、強国にしようと志す人、他国を併呑して天下を治めようとする人の好むところである。片田舎の雄大な沢で、のんびりと釣りを楽しむことに専心する。これは、江海の人、世捨て人、仕事もない暇な人の好むところである。冷たい空気を吸って古い空気を吐き出し、熊が木にぶらさがるような、鳥が飛び立つような伸びをして運動に専心する。これは、導引の人、養生をする人、彭祖のように長生きをしたい人の好むところである。

『靜然可以補病、眥?可以休老、寧可以止遽。雖然、若是、勞者之務也、非佚者之所未嘗過而問焉。』(『荘子』外物 第二十六)
→安静にしていれば、病を癒す効果がある。目の周りを按摩するのは老化を阻む効果がある。ゆったりと呼吸を整えるのは、緊張を和らげる効果がある。しかし、そういったものは安定した精神を保ち得ない者のすることで、ある境地に立ち得た者には何ら興味を引かない行いとなる。

・・・神秘思想の分野でも評価の高い『荘子』という本には「導引の法」に代表される中国の古いヨーガの様式についての記述がありますが、紹介をしながらもヨーガに溺れるようなことには否定的です。夢占いを除く占いもそうです。

参照:荘子がいるらしき場所。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5071

今日はこの辺で。


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